その理由を求めて、まずは、温泉の歴史をたどってみることにする。
大和朝廷の頃から、温泉は、病気や怪我を癒す不思議な水として、神の湯と
崇められていたが、文献資料に登場するのは「古事記」・「日本書紀」などが編纂された
奈良時代。この時代の入ると仏教伝来の影響を大きく受け、次第に信仰の対象として昇華。
温泉(沐浴の功徳)と布教によって病を治そうとしたのだ。
源頼朝が鎌倉に幕府を開き、政治の中心が、関東に移ると関東・東北・甲信越などの温泉が
々に開拓されていく。戦国時代には、武士の療養地にもなっていた。
江戸時代になると一変。湯治場に庶民の出入りも許されるようになる。
温泉行きは次第に娯楽色が強くなっていく。ここに現代に生きる温泉観のルーツが
潜んでいるようだ。江戸時代に首まで浸かる現在の風呂の原型が登場。
ゆったりと湯に浸かって一日の疲れを癒す、という日本人独特の習慣が出来上がる。
明治に入ると、「日本の温泉医学の父」と言われるドイツ人医師ヘルツによって、
西洋医学に基づいた温泉医学や温泉地開発の指導が行われた。そして、多くの温泉地が
観光地化していく。高度成長期には、宴会の場として盛んに利用されるようになる。
現在は、利用者のニーズによって様々なタイプの温泉に分化してきている。
温泉は、含まれる成分により、異なる泉質を持つ。温度の違い、匂いの違い、色の違い
など、様々な個性を持っている。もちろん、効能もいろいろで、医学的に認められた効果もたくさんある。また、温泉独特の「色」と「香り」が高揚度を高める。もちろん、
土地の風景や気候、風、特産物なども相まって、「温泉」の魅力は私たちを惹きつける。
ストレスの多い現代社会に生きる私たちにとって「癒し」は、不可欠である。
「転地効果」と言い、温泉に行くこと自体がストレスを解消し、療養効果を生み出すという
理論があるが、まさに、自宅のお風呂では、入浴剤の力を借りても、得られない効果である。
江戸時代に広まった庶民の旅、時代は変わっても、旅は、常に私たちに日常からの解放と
喜びと癒しを与えてくれる。温泉には、体をリラックスさせる成分(効能)があるし、
自然豊かな環境で湯につかることで精神的にもリラックスし、相乗効果をもたらす。
温泉に浸かるという独特の文化を、江戸時代から受け継いできた私たち日本人だけが
味わうことのできる最高の喜びがある。
「温泉」に歴史あり!紅葉の季節がやってくる。露天風呂で、太古の祖先と同じ風を受け、
綿々と受け継がれてきた温泉の文化に想いを馳せてみては、いかがだろうか。
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