数学者の藤田宏先生の講演を聞く機会があった。
藤田先生は東京大学名誉教授で、数学オリンピックの初代理事長。
なんだか肩書きだけでもすごい人である。
ご年齢は85歳と高齢であるが、背筋はしゃんと伸びて興味深いお話を聞かせてくれた。
そしてなにより、穏やかな雰囲気と話し方で
あっという間にその魅力のとりこになってしまう。
ちっとも偉そうではないのだ。
今回の講演は、前半が「いかに数学があらゆる分野で影響を与えているか」という話、
後半はある数学問題の証明を講義するという2部構成だった。
前半では具体的に著名人の例を挙げ、なぜ数学が必要と感じられるかという話を
いくつかの例を示してくださった。
後半は1題の幾何問題をステップ毎にみんなで検討しあいながら
仮説を証明していくという形で進められた。
特に後半になってからの先生の声の張りはすばらしく、
話を野球のリーグ戦に例えて考えていくなど大変興味深いものだった。
さすが、長年大学で学生を指導してきただけあり
その講義は感動ものだった。
錆びついた私の脳みそも久々にオイルが注入されて、カタカタと動き出した。
今回印象的だったのは最後の質疑応答で「なぜ数学が好きになったか」という質問に
答えた先生の話である。
子供の頃は特に数学が好きだったわけではなかった。成績が悪いと親に叱られるから
勉強をしていたら得意になっていた(ここがすばらしい)。
中学を卒業するときに終戦となり、これまで受けていた教育や考え方が
全て否定され180度違うことが正しいと教えられた。
世の中が移りゆくものであるのなら、いつも揺らぎのない自然科学の世界に身を置こう
と考えた、という話だった。
最後に「数学はひとそれぞれの付き合い方がある」そうだ。
理系に進むならじっくりと取り組まなければいけないが、そうではない人たちも
どこかで何らかの形で付き合うことが大切だ。
数学が苦手な人たちも細くどこかでつながっていってほしい。
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