2013年3月20日水曜日

桜【国語担当】


「雪」以上に多くの隠喩(メタファー)を持つ言葉が「桜」である。
春の歌のフレーズに「花」とあれば、「桜」のことだ。
サクラサク」は「合格」。「花吹雪」と例えられるのは「桜」だけ。
遠山の金さんも、背中に見事な桜吹雪をまとっていた…。
「桜」は、百円硬貨にも描かれている。
また、日本の年度始まりが、4月であることから開花の時期と
重なり、人生の転機を表すメタファーにもなっている。

「桜」は国花ではないが、日本人にとっては、国花以上の扱いである。
桜前線や開花予想は、毎年この時期のニュースとして取り上げられる。
また、散りゆく様の儚さや潔さが、武士道の精神の象徴となり、
道徳観の基礎を成し、「桜」は日本人の精神の象徴として
今でも脈々と受け継がれている。

桜の素晴らしさは、生と死という真逆のメタファーを
併せ持つことでもある。生…生命の美しさの象徴。死…散り行く
=散り逝く、散る=潔い死。そして更に素晴らしいのは、真逆の
メタファーのスパイラルだ(翌年また美しく咲く→散る…の
繰り返し=蘇生)。これが日本人固有の「輪廻」思想と重なり、
日本人の精神世界に大きな影響を与えている。この桜の特別な
イメージを多くの日本人が共有していること、それこそが、
メタファーとして機能している主要因なのである。

梶井基次郎の…「桜の樹の下には屍体が埋まっている」…という一節を
ご存じだろうか。「桜」の過剰なほどの美しさ・華やかさは、容易に
受け入れ硬く、一番醜いものを置くことにより、ようやく納得できる
ようになる…というような解釈である。
桜(美の象徴)と屍体(醜さの象徴)=生と死。
奇想天外な組合せが多くのメタファーを想像させる文章だ。
そして、屍体があるからこそ、皮肉にも一層「桜」の美しさが際立つ。
なんとも奇天烈な発想ではあるが、見事な表現である。
最後に、日本の国花って…「菊」ですよ。

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