2012年10月17日水曜日

模索⑥…モンスター現わる【国語担当】


私が彼女と出会ったのは、とある職場でだった。
20代後半、シングルマザーのP。
彼女の生き方、考え方は、私が過去、お目にかかったことのない
特異なものだった。彼女の根幹に流れるものは「愛」だという。
「愛」の為に生き、「愛し、愛されて」死んでいくのが
全て…と言って、憚らなかった。
「わたし、愛がないと生きでいけないんですぅ」
彼女の発する言葉は、エロティックで刺激的だった。
ピンク色の丸文字に変換されて私の心に響いた。
幼い頃から、意中の男性のことだけを考え、身も心も彼好みの
女性になるための努力に時間を費やしてきたという。
私が不可欠と感じる常識や観念は、全く持ち合わせていなかった。
私が必死で追い求めてきたものには、一切、興味も関心もなかった。
それどころか、なぜそんなことに必死になっているのか?と
不思議がった。互いに異質だったのだ。

ふと、「今度生まれかわれるのならPに生まれ変わりたい」と思った。
それを伝えると、Pは「だめですぅ。わたしは生まれ変わっても
またわたしに生れたいからぁ」と返された。
この言葉を聞いたときの私の状況は、漫画でいえば、後頭部に
大きな岩がのっかっていて、顔上部半分がグレーで、縦線が
入った図だ。そして右上に大きく「ガ~ン!」という文字。
人生、誰でも後悔は付き物で、同じ人生をもう一回送りたいなどと
思う幸せ者は、イチロー選手か石川遼君くらいかと思っていたが…。
っていうか、建前でも「じゃあ、わたしはあなたに生まれ変わりますねぇ」
くらい言ってもいいんじゃね?! 私の人生、全否定かよ?…って思った。
Pに「わたし、桃っぽいねって言われるんですけどぉ、何っぽいって
言われますかぁ?」と尋ねられた。とっさに「ごぼう…」と答えた自分が
悲しかった。それから、私は「桃」が嫌いになった。

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